議論の過程では、特に「自己認識を深め軸を磨くこと」に刺激を受けました。
当初は、自己認識を掘り下げることに何の意味があるのかと思っていましたが、自身が創られたルーツをひも解いて再定義することで、経営者としてどう在りたいか、自分なりに答えを導き出す機会になりました。最終回のプレゼンテーションでも伝えましたが、自分には社交性もカリスマ性もありません。けれど、強化するのでなくそれを弱みと認識した上で、それでも使命を全うするために軸を磨いていくのだと、腹が据わりました。
軸については、今までも譲れないものは持っていたので大きな変化はないものの、知命社中での議論を経て、説明がつけられる軸に深化させることが出来たと感じています。私は、部下にも軸を持つよう伝えています。ただ従うだけではなく、本当に腹落ちしているか絶対に自分で考えなければいけません。専門メーカーとして、モノづくりに対して確たる軸を持つことは責任です。だからこそ、「まずは自分の意見をぶつけてほしい」と、強く伝えていきます。
今までは、軸など情理的なものではなく、基本的には合理で決めるべきだと考えていました。しかし、実は合理で生きるのが一番簡単な生き方で、情理を取り込めてこそ真の経営者なのだと気づいたのです。情理のない経営者に人はついていきません。しかし、企業理念として「世のため人のために」と掲げていても、実際の商売とは日々注文の取りあいで、利益重視であるのが実態です。けれど、事業の根本には、日本のため・世のため人のためであると自覚しなければ、事業発展はないのです。もう一歩大きな企業・人間になるために、原点を深く自覚し、誠実に生きたいと強く思っています。