技術の専門家から経営の立場へと変化し、日々世界のトップレベルの方とお会いする中、日本人として・個人として、経営者の立場で貢献すべきことや、何に基づいて判断すべきか曖昧だったものを、知命社中を通して確かなものにすることが出来ました。
プログラムの中では、登壇者の講演内容そのものよりも、「この方はこう整理したからこう考えたのだ」と、登壇者の主張の思考に至ったプロセスと事実を分析することで、主張がどうつながっているのか意識しながら聴くようにしました。内容は共感出来る場合とそうでない場合がありましたが、辿り着く最後のメッセージは根本的に共通していることに気づき、より本質に迫って物事を捉えるようになりました。
きっかけとなったのは、日本観や自己理解をテーマにしたモジュールです。私はもともと土着で日本的思想が身近にある環境で育ちましたが、今までそれは宗教的思想の中での考え方として捉え、仕事とは切り離していました。しかしそれが、自身の考え方にどのように影響していたのか気づくことが出来ました。
異文化でも同様です。フランス駐在は初めて文化の違いを実感する経験で、それぞれ異なる思想や守るべきものがある文化の中で、当時は全く異なるアプローチであると理解していました。しかし今回の経験を通して、異なる文化であっても突き詰めて考え抜く先にある根本的に目指すことは、共通していると気づいたのです。
これにより、以前は「葛藤」や「高い困難」であると感じていた問題も、分析し本質を捉える事で、今までのカンコツに基づく判断を裏付ける「論理づけ」が出来るようになりました。その結果、その判断が自分の持っている信念に照らして矛盾がないか確認出来るようにもなったのです。論理づけは、自身の思いを関係者に伝達する上でも非常に有効で、より高いレベルの論議を導くことが出来るようになったと感じています。
知命社中でそのような見方をする訓練をさせてもらうことで、自分の行動の源流を深く理解し、より強固な軸足を持つことが出来、経営者として自信をつけることが出来ました。
昔から「立派な人になりなさい」と言われて育ってきました。経営者としてどうするか、という以前に、人間として立派であることが、結果としてマネジメントでも一番重要で、経営者として、人としてあるべき姿はつながっていると確信を持つことが出来ました。
自分一人でやれることなんて限られています。自身の底にある本質を仲間に共鳴してもらうことで、よりパワフルに物事を推進できると思います。今自分が置かれている環境に感謝し、自分が目指す「世に貢献する」という壮大な命題に挑戦し続けたいと思います。