私は都市銀行から当社に転職して一年ほど経った頃、カルチャー変革及び新規事業創出を推進する部門の役員に任命されました。ミッションや職位こそ前職と同様でしたが、ビジネスの範囲も規模、社員の強み・弱みも全く異なり、これまでの手法が通用しない現実に直面しました。そこで、セブン銀行にフィットするよう、自分のリーダーシップやマネジメントスタイルを一度リセットする必要があると感じていたのです。
リーダーとして自信を持って組織を率いるために、必要な心構えを改めて学び直したい。そう考えたことが「知命社中」への参加を決めた動機でした。

当時の私は、知識の幅の狭さと、硬軟織り交ぜたマネジメントができていないという二つの課題を感じていました。確かに、パワーで進めれば成果は出ます。しかし、それでは従業員は誰も喜びません。大切なのは「何のためにこの成果を出すのか」という目的を伝え、腹落ちさせること。それができて初めて人は動くのだと気づかされました。

プログラムでは、リーダーシップ論だけでなく、地政学やアートなど多様な領域から刺激を受けました。それらを通じて自分を認識し直し、自分を信じることの大切さをあらためて意識する機会にもなりました。
なかでも一番の変化は、「覚悟」を持てるようになったことです。

以前は企画書一つとっても完璧主義で、一分の隙もないものにしようという意識が強くありました。ですが今は「まずは 30 点の出来でもいい、そこから考えよう」と部下に伝え、割り切れるようになっています。いわば「やらない覚悟」と「任せて信じる勇気」です。
スケジュールにもあえて余白を作り、その時間は人に会うなどして、新たな価値創造に充てています。そうした時間こそが、リーダーにとって大切なのだと感じるようになりました。

リーダーも、わからないことは「わからない」と言う方が良いと思います。「わかったふり」が一番いけない。正直に弱さをさらけ出し、周囲が助けてくれるのも良しとする。ただし「責任は自分が取る」というメッセージは欠かせません。それがメンバーの精神的な安全にもつながると考えています。

何もかも一人ではできません。だから、自分が周囲の 10 人を変えれば、その 10 人がまたそれぞれの周囲の 10 人を変えていく。そうやって波及させていけば良いのではないかと思っています。

また、外部出身の私だからこそ持てる「外様魂」も大事にしたいと思っています。取締役会などで社外取締役の話を聞くと、私たちとは違う視点に驚かされることがあります。本来は、その視点を自分たち自身も持つことが、経営を進化させていくうえで重要なのだと思います。

「知命社中」での学びは、ゲマインシャフト(共同体)的な思考に通じるもので、言語化が難しい側面も多いものです。ですが、それをプログラムに参加していない人にも共有できるように、表現を工夫し、言語化を図ることも私の役割だと確信しています。

当社はコンビニの ATM をドメインに成長を果たしてきました。そこには未知の領域にチャレンジしたイノベーションマインドがあったはずで、その精神を経営陣にも若手社員にもあらためて伝えていきたいです。

そして、今後の構想を描くうえでは外を知ることも大切です。「知命社中」を通じて、業種業態が全く異なる方々と親しくなれたことも、私にとって大きな刺激になりました。このように外を知りながらも、自分起点の発想でセブンのケイパビリティをどう活かし、何を生み出していくのか。そこを考え続けていくことが必要だと思っています。